小さな小さなマテリアル食堂

1月のランチコースメニュー

料金:3080円

2024/01

料理を再開する

私は元々コックをしておりました。
20年近く料理の道で生きていました。
「手に職があるので、いつでも料理界へ戻れる」と思い、料理の世界から20年近く離れてしまっていた。
気が付くと、目の障害が進行し、料理はおろか、他のことも出来にくくなっていました。
絶望的になったのも事実でしたが、幸い私にも仲間がいてくれました。
目が悪くても出来ることは無数にあるのではないか?と考えつつ、新しいことにチャレンジする日々が始まりました。
映画の上映がメインになるので、色々なことを試していきました。
そして、その中で「料理の再開」という想いが湧いてきたのです。
料理ができるのか?自問自答しながら試してみる・・・。
通常の営業方法ではやはり無理があります。
そこで、「限定」を」取り入れて思い切って再開しました。
料理も人数も限定です。

冬の宴:温もりを紡ぐ
美食の調べ

厳しい寒さの中、雪が舞う1月の夜。
一人の旅人が、温かな光を放つレストランの扉を開けた。
凍えた体に、店内の暖かさが心地よく染み渡る。
笑顔のウェイトレスが、暖炉の傍らのテーブルへと案内する。
「寒い夜にぴったりの美食の旅をご用意しました」
とウェイトレスが優しく語りかける。
最初に運ばれてきたのは、

「前菜の3種盛り合わせ」。
白い皿の上に、まるで冬の庭園のように彩られた
小さな前菜たちが並ぶ。
旅人は、これから始まる冬の饗宴に期待を膨らませる。
続いて、湯気を立てながら

「クスクスの入ったミネストローネスープ」
が運ばれてきた。
鮮やかな赤い色が、まるで真冬の太陽のよう
。スプーンを口に運べば、
野菜の甘みとトマトの酸味が体の芯まで温める。
クスクスの優しい食感が、まるで雪のように口の中でとろける。
そして、プリモピアットの登場だ。

「ジェノベーゼソースで和えたスパゲティ、真鯛のバターソテー添え」
をウェイトレスが丁寧に置く。
深緑のソースが、冬の森を連想させる。
バジルの香りが立ち昇り、
旅人の鼻腔をくすぐる。
バターでソテーされた真鯛は、冬の海の宝石のよう。
一口で、厳しい寒さも忘れてしまいそうな温かさが広がる。
夜も更けた頃、ウェイトレスが嬉しそうな表情で次の皿を運んでくる。

「スペアリブと豚バラ肉と温野菜のクリームシチュー風のソース」だ。
たっぷりのソースが、まるで雪に覆われた景色のよう。
柔らかな肉と温野菜が、クリーミーなソースに包まれて溶け合う。
一口ごとに、凍えた体が内側から温まっていくのを感じる。
そしてデザートの時間へと・・・。

「手作りプリン」が、冬の夜空に輝く星のようにテーブルに置かれた。
カラメルの輝きが、旅人の目を温かく照らす。
なめらかな口当たりは、まるで舌の上で溶ける雪のよう。
甘さと苦さのハーモニーに、旅人は思わずため息をつく。
最後に運ばれてきたのは、湯気の立つ
「食後のコーヒー」。
深い香りが立ち昇り、冷えた体を包み込む。
苦みの中に隠れた甘さが、この冬の夜の思い出を心に刻み込む。
旅人はウェイトレスに感謝の言葉を告げ、
再び寒い外の世界へと足を踏み出す。
しかし、心の中には温かな美食の記憶が宿り、
厳しい寒さをも優しく包み込んでいた。
冬の宴が奏でた温もりの調べは、
長い冬の夜を越えて、きっといつまでも響き続けることだろう。