小さな小さなマテリアル食堂

6月のランチコースメニュー

雨音はショパンのしらべ

梅雨の季節、しとしとと降る雨音を聞きながら、私はMATERIALの厨房で思索に耽っていました。
6月のメニューを考えるにあたり、初夏の爽やかさと、梅雨時期特有の湿気を和らげる要素を取り入れたいと思ったのです。
まず、生ハムとフルーツの組み合わせが頭に浮かびました。
甘くてジューシーなメロンと塩味の効いた生ハムのコントラストは、食欲をそそる前菜として完璧でしょう。

そして、梅雨時期の蒸し暑さを癒すために、
冷製カペリーニを考案しました。
カラスミの風味が加わることで、
海の香りが漂う爽やかな一皿に仕上がりました。

メインディッシュには、
マグロのソテーと豚バラ肉の蒸し焼きを選びました。
マグロには濃厚なアンチョビバターソースを合わせ、
豚バラ肉にはツナを使った軽やかなソースで仕上げることで、
バランスの取れた味わいを目指しました。

デザートには、カタラーナを選びました。
クリーミーな口当たりとカラメルの香ばしさが、
食事の締めくくりにぴったりだと考えたのです。

このメニューで初夏の爽やかさと梅雨時期の心地よさを、
お皿の上で表現したいと思いました。
雨音を聞きながら、ゆったりとした時間の中で、季節の移ろいを感じたい。
そんな素敵な時間がお皿の上で過ぎていったのではないでしょうか。

美食の旅人、6月の物語

初夏の陽気に包まれた6月のある日、
旅人は再びCUCINA MATERIALを訪れようと歩を進めていた。
しかし、店の前に立った瞬間、旅人は驚愕の事実に気づく。
ドアに掲げられた小さな看板には、こう書かれていた。
「営業日:毎月1回、土曜日と日曜日2日間のみ」
旅人は思わず目を擦った。
これまで気づかなかったその事実に、
心臓が高鳴る。
月にたった2日間しか開かないレストラン。
その稀少性に、旅人は今までの訪問の幸運を噛みしめた。
扉を開けると、いつもの笑顔でayumiが出迎えてくれた。
「お帰りなさいませ。今日はとても特別な日なんです」
その言葉に、旅人は不思議そうな表情を浮かべる。
「実は、今日は初夏の食材が最高の状態になる日なんです。
その喜びを込めて、特別なメニューをご用意しました」
窓際の席に案内されると、外の景色は初夏の輝きに満ちていた。
最初に運ばれてきたのは、
「生ハムとフルーツ」。
薄切りの生ハムが、みずみずしいメロンとフルーツで
艶やかに盛り付けられている。
一口頬張れば、生ハムの塩気とメロンの甘みが見事に調和し、
初夏の喜びを口いっぱいに広げる。
続いて料理は出てきた。
「カラスミ風味の冷製カペリーニ」
「マグロのソテー、アンチョビバターソース」
「豚バラ肉の蒸し焼き、綱を使ったソース」
「カタラーナ」
いつもの贅沢を堪能した旅人が
コーヒーを楽しんでいると、突然osakabeシェフが姿を現した。
「本日はお越しいただき、ありがとうございます。
実は、月に2日しか営業していない理由をお話ししたいと思います」
旅人は、息を呑んで聞き入った。
「私たちは、最高の季節の素材を最高の状態で提供したいのです。
そのために、残りの日々は素材探しと研究に費やしています。
今日のメニューも、その成果の一つです」
その言葉に、旅人は深い感銘を受けた。
osakabeシェフの情熱と哲学が、
この稀少な体験を生み出していたのだ。
「そして、お客様との出会いを大切にしたい。
だからこそ、限られた日にしか開けないのです」
旅人は、心からの感謝と共に店を後にした。
CUCINA MATERIALとの絆は、この日さらに深まった。
そして旅人は、次なる奇跡の日を
今か今かと待ち望むのだった。
月に2日だけの、
美食の奇跡を求めて。​​​​​​​​​​​​​​​​