小さな小さなマテリアル食堂

12月のメニュー

静かに降り始めた初雪が、街を白く包みつつあった12月のある日。
旅人は、CUCINA MATERIALでの最後の訪問に臨んだ。
これまでの10回の旅の記憶が、まるで雪の結晶のように、繊細に心に積もっていく。
扉を開けると、いつもの温かな空気が旅人を包み込んだ。
ayumiの優しい微笑みが、まるで物語の締めくくりを告げるかのようだった。
「最後の訪問を、心よりお待ちしておりました」
窓際の席に座ると、外の世界は純白の雪景色。
木々は冬の衣を纏い、静寂が街を包んでいた。
最初に運ばれてきたのは、

「ズッキーニとトマトの玉子乗せオーブン焼き アンチョビ風味」。
オーブンから立ち上る湯気は、冬の温もりを運んでくる。
柔らかく焼き上げられた玉子、シャキシャキとしたズッキーニ、
そして深みのあるアンチョビの風味が、
まるで物語の序章のように優雅に口の中で広がった。
次に登場した

「ワタリガニのトマトソースのスパゲティ」は、
まるで海の記憶を閉じ込めたような一皿。
ワタリガニの濃厚な旨味がトマトソースと見事に融合し、
冬の海の深さを想起させる。
スパゲティは、まるで旅人の10回の旅路を物語るかのように、
複雑で奥深い味わいを醸し出していた。

「サーモンの白ワイン蒸し焼き レモンバターソース」は、
繊細さと力強さが共存する一皿。サーモンの柔らかな身は、
白ワインの香りに包まれ、
レモンバターソースが軽やかな酸味と温かさを添えていた。
まるで、これまでの旅の思い出が、優しく光り輝くかのようだった。
メインディッシュ

「牛バラ肉の赤ワイン煮込み」は、
まさに最後を飾るにふさわしい一皿。
赤ワインに長時間煮込まれた牛バラ肉は、
驚くほど柔らかく、深い味わいは旅人の心に最後の刻印を押すかのよう。
冬の夜長にふさわしい、豊かで温かな料理だった。
デザートの

「チョコレートケーキ」は、
苦みと甘みが絶妙に調和した逸品。
まるで物語の最終章のように、
濃厚でありながら繊細な味わいは、旅人の心に深く刻まれていく。

食後お飲み物を楽しみながら、おなじみのosakabeシェフが近づいてきた。
「11回のご来店、本当にありがとうございました。
今日で、この物語は一つの区切りを迎えます」
旅人は静かに、しかし力強く応えた。
「CUCINA MATERIALでの食事は、私の人生に深い彩りを添えてくれました。
季節の移ろい、料理の物語、そしてここでの思い出は、私の心に永遠に刻まれるでしょう」
osakabeシェフは、深い感慨を込めた眼差しで微笑んだ。
「お客様との物語は、ここで終わりますが、
新たな物語はきっと始まるはずです。
私たちの料理が、その物語の一ページになれたなら、
これ以上の喜びはありません」
店を出ると、雪はますます静かに、
そして美しく降り続けていた。
旅人は、11回の来店を通じて紡がれた CUCINA MATERIALとの物語を胸に、
静かに、そして希望に満ちて歩み出した。
冬の静寂の中、一つの物語が静かに幕を閉じた。
しかし、新たな物語への予感だけは、
冷たい空気の中で、温かく、そして力強く息づいていた。​​​​​​​​​​​​​​​​

次回は2025年バージョンで物語を綴ります。
本年はありがとうございました。
2025年もCUCINA MATERIALをどうぞよろしくお願いいたします。